2013年2月18日月曜日

ダニエルさんからの手紙+配置とセンスについて

と、いうことで。先日横浜であった「マームとジプシー」公演のおたよりが届きました!
さっそくダニエルさん、よろしくお願いしまーす。

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マームとジプシー
あ、ストレンジャー

 まだまだ寒い日々が続きますが、
 みなさま、いかがお過ごしでしょうか。ダニエルです。
 マームとジプシーの『あ、ストレンジャー』を、吉祥寺では観られなかったので、
 横浜で観てきました。

 さて、劇場に行くとやたらとチラシをもらうことが多いですが、
 みなさんはチラシのどこを見ますか? 
 タイトル、演出家(振付家)、出演者、劇場等々、
 いろいろ見るべき点はありますが、
 僕はまずデザインを見ます。
 「デザイン」なんて直球すぎると言えば、直球すぎですが、
 チラシも一種の表現ですから、写真(またはイラスト)のセレクト、
 色づかい、フォントなどに当然作り手のセンスが出てくるのです。
 前に誰かがどこかに
 「チラシのデザインがよくてもつまらない舞台はあるけど、その逆はない」と
 書いていたのを読みましたが、経験上その通りだと思います。

『あ、ストレンジャー』のチラシは、
最近見かけたチラシのなかでは群を抜いてセンスがよく、
一目見たときから気になってました。
どんなチラシというと、まず斜線で画面が三分割されています。
上下の三角形の範囲が青、挟まれた真ん中の台形の部分が白で、
白い部分にはスラッシュがたくさん入っていて、
そのなかにタイトルの「あ、ストレンジャー」が一字ずつランダムに置かれています。
なんというかこう、全体的に「配置」がうまいのです。
そしてこの「配置」のセンスのよさは、作品でも発揮されていたのでした。

カミュの『異邦人』を下敷きにしたこの作品では、
主人公の若い女性の、母親が亡くなってからの3日間が、
バイト先の人々との関係を交えて描かれます。
単線的に書いてしまうと、割とサッと終わってしまう物語なのですが、
マームとジプシーの特徴と言われる「リフレインくり返し」を使いながら
話を進めていくことで、重層的な物語になっていました。
物語を時系列的に最初から終わりまで一直線に進めるのではなく、
場面を切り出して、時間的な前後関係をずらして並べたり
(土曜日の場面の次に、二日前の木曜日の場面になったり、
その次にまた土曜日になったりします)、
同じ場面を違う視点で再度演じてみたりしていました
(最初は主人公の視点を中心に演じ、
二回目は相手方のバイト先の先輩の視点を中心に演じるとか)。
こう、行きつ戻りつするなかで、話の全体像が見えてくるのです。
つまり、場面の「配置」に工夫が凝らされているのですが、
これがうまくいっていたのは、センスがあるからなのでしょう。
「配置」についてのセンスのよさはまた、
舞台上での俳優やモノ(=舞台装置・小道具)の配置の仕方にも発揮されていました。 劇中で、場面は主人公が暮らすアパートの一室から、
バイト先のカラオケボックス、海辺、主人公の母親が入所していた施設等々、
様々な場所に移るのですが、一個一個、リアルな舞台装置を作ることはしていません。 机や椅子、大小二つの木枠、床に引かれた線、
コーヒーカップやラジコン、ミニカーといった小道具の数々と照明、
ライブ映像などを使って場面の変化を示すのです。
で、ひとつひとつの要素の選択、それらの組み合わせのセンスがよいのです。

このように、お話の点でも、演出の点でも個々の要素がセンスよく配置された結果、
ひとつひとつの場面がとてもフレッシュに見えました。
こうした体験は、この『あ、ストレンジャー』という作品のあらすじを読むだけでは
絶対にできないことです。
要素の「配置」というのも、演劇作品を作る上で、重要なポイントだと思いました。
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そうなんです。チラシはね、すごい左右するよね、舞台を観る気を。
いいなあ!っていうのが大当たりする可能性はまあ半々ですが、
だいたいチラシみて「あれ?」と思ったら合わない可能性のほうが高いです。
だいたいチラシって演劇にとっては唯一至高の(言い過ぎだけど)事前情報なので、
そこでテンションあがんないともう、行く気なくなっちゃいますよね。へへへ。

あとは配置か。そう、舞台は総合芸術なので、
とにかくいろんな要素がいっぺんに提示されます。
何でもできるからこそ、何にもしないという選択肢もあるわけで。
往々にして、引き算のほうがむずかしいですよね。私はかなり苦手な方なので、うまくいっている舞台をみるといつも「ほう」となります。

それにしても・・・!観たかった。悔しい。だって「配置が良い」と聞いても観てみるまで全然わかんないじゃん!いまわたしが想像する「配置の良さ」よりずっといいものが観れると思うし。うわー。今回私はイベントの準備と本職の仕事のラッシュが重なって行けなかったのです。次こそはかならず!

 

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